橘玲(たちばなあきら)氏の書いた「2億円と専業主婦(旧題:専業主婦は2億円損をする)」を読んだことがある。結婚しても正社員で働くことで2億円得する、という内容だが社会情勢もありすべての世代の女性にそれを求めるのは「無理ゲー」に近い。しかし働くことは自分も成長し良いことなので私は肯定的に捉えた。今の時代の人にはがんばって欲しい。
橘玲氏は、元編集者で小説家。日本でまだアメリカ株を買えない時代から工夫してアメリカ株を買っていた方のようだ。
わたしたちは人類史上、あり得ないようなゆたかさを実現したが、皮肉なことに、それによって人生はますます生きづらくなってしまったのだ。
裏道を行け-プロローグより-
ゲーマーは、攻略できないゲーム(無理ゲー)は「ハック」か「チート」するしかないと考える。既存のルールを無視して「裏道(近道)」を行くのだ。
同様に人生が攻略不可能だと感じたら、ゲーム世代がシステムをハックしようとするのは不思議でもなんでもない。
本書は下記の5つのパートで書かれている。
- 恋愛をHACKせよ(「モテ格差」という残酷な現実)
- 金融市場をHACKせよ(効率よく大金持ちになる「究極の方法」)
- 脳をHACKせよ(あなたも簡単に「依存症」になる)
- 自分をHACKせよ(テクノロジーが実現する「至高の自己啓発」)
- 世界をHACKせよ(どうしたら「残酷な現実」を生き抜けるか?」)
「金融市場をHACKせよ」では、ウォール街の歴史を書いており興味深い。
1969年にアポロ11号が有人月面着陸に成功したことで宇宙開発の予算が引き下げられたため、学者への道を閉ざされた博士号を持つ理系の若者たちが金融機関で働くようになった。彼らは高度な数学・物理学を使って数量的・定量的に金融市場を分析した。
「裏道を行け」より
そして1970年代にはエドワード・ソープ(後にバフェットの友人)はPNPというヘッジファンドで大いに利益を上げた。
そんなこんなでその頃から、市場の歪みを計算し彼らは儲けていたのだ。
昨夜NHKのバブル時代の話「東京ブラックホールⅢ」でも描いていたが、バブル当時日本の証券会社は、アメリカの超優秀な頭脳を持った人たちが計算して作ったシステム「裁定取引(arvitrage)」を知らなかった。バブルは実態より上がり過ぎていたが日本人は海外で高いものを買ったりやりたい放題し、アメリカの怒りを買うことに。
当時野村證券にいたという人は、「機関銃に竹槍だった。」とはっきり言っていた。
第二次世界大戦についで、ここでも日本は「機関銃に竹槍」だったのだ。
上がり過ぎたバブルが崩壊、証券会社・一般投資家等々、悲惨な結果となってしまった。
やはりアメリカに100年遅れている日本と昔から言われていたが、かないっこないようだ。
リーマンショックもそうだが、世界のマネーゲームで損をするのは無力な一般庶民だ。
歴史を考えると、日本は高度成長期の後はアメリカのマネーゲームの「いいカモ」になってしまい今まで来ているような。。
巻き込まれないようにしたい、というか被害は最小限にしたい。
ピーター・スコット=モーガン(ALSになったが、テクノロジーを駆使してサイボーグ化することを選んだ科学者)の話もあり興味深い。
現実はいろいろなことが高度化し、普通の人が普通に働いて普通に子どもを持ったりすることがなかなかに難しくなっている。この本には簡単な解決方法などは書いていない。
自分にできる防御方法(生き延び方)を、自ら考え尽くすしかない。
世界をHACKできなくても、逆に自分にとって幸せとは何か・・・を考えさせてくれる本であった。