年明け最初に読んだ本の備忘録です。
ムダに不安になるのは良くないので、あまり悲観的なコンテンツは書きたくはないのですが、知っておくべきかもと思いました。
筑波大学名誉教授で分子生物学者の村上和雄さんの本。今、この過渡期にこそ考えなければならない示唆に富んだ内容でした。
著者は、高血圧の黒幕である酵素「レニン」の遺伝子解読に成功した科学者です。
そしてこう言います。人類が人の細胞やゲノムの全てを解き明かしたとしてもそれは物質としての身体のこと。人の細胞のひとつひとつが協力しあい、なぜ人の身体の全てを過不足なくコントロールできているのかまではわかっていない。
人の身体は常に、要らなくなった細胞はアポトーシス(自死)し、それを再利用したり、がん細胞を免疫細胞が退治したり、細い血管が自分で伸びて栄養を運んだり、生き続けるために細胞レベルで奇跡のような活動をしている。
著者はそれらは「サムシンググレート」が行っているとしか思えない不思議さだと言う。
また、見方を変えて地球を大きな生命体(ガイア理論)ととらえれば、人類は細胞のひとつ。
・・・ガイア理論とは、イギリスの科学者ジェームス・ラヴロック博士が、NASAに勤務していた1960年代に唱えた説。地球の構成要素は自己調節機能を持ってバランスを取っている。構成要素には、気温や大気の容積、海水の塩分濃度などが含まれ、生命体のように生きているように見える。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」は、1962年に著されています。59年も前なんですね。この時すでに生態系の破壊を世に訴えていたにも関わらず、人々は「もっともっと」と豊かな暮らしを追い求め、同じ地球に住む動物や植物の命を気にせず、資源を消費し続けた。それもその時は仕方のないことなんですが、今すぐ、方向転換しないと間に合わない。
村上和雄さんは、下記ジャック・アタリ氏の予言を紹介されている。
ジャック・アタリ氏の予言ー2050年には民主主義も政府も、国家さえもなくなる。
20世紀最大の知識人と呼ばれるフランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、21世紀中に人類の歴史に終止符が打たれる可能性があると書いている。哲学者でミッテラン政権の大統領補佐官を務めたこともある彼が2007年の著書「21世紀の歴史 未来の人類から見た世界」は日本でもベストセラーになったとのこと。
これまで、ソ連崩壊や金融バブル、インターネットの普及などを言い当ててきた彼によると、このままいけば金銭による支配は国境を越え、拡大し続ける市場によって2050年ごろには「超帝国」が生まれる。
地球規模で統一された市場では、自然環境は破壊され、軍隊や警察、裁判所など全てが民営化される。公共サービスも民主主義も、政府や国家さえ破壊される中で、貧富の格差は拡大、貧困層が増大していく。
今よりももっと。。。。
やがて世界各地で未曾有の「超紛争」が勃発し、いかなる国際機関も調停に乗り出すことはできない。ついに世界は巨大な戦場と化して、一般市民はあらゆる種類の大量破壊兵器の餌食となり、人類は滅亡へと導かれていく、と。
ーー今は2022年初頭です。例えば、アメリカと中国・ロシアの覇権争いで勝った国が「超帝国」となるのかも知れません。現在のアフガニスタンやミャンマーを見れば、既に国際機関の手に負えていない。軍に支配された人々は殺され、誰も助けることができていない。
現在の北朝鮮も、 既に国際機関の手に負えていない。
すでにアメリカは富み、日本は貧しくなっている。
また最近は、バイデン大統領の支持率はコロナ禍とインフレのせいで下がっている。
アメリカ人の一部の人たちは、歴史的な転換点に気付かず、まだトランプを支持している。
またトランプが大統領にでもなったら、と思うとぞっとします。
何年後かにプーチンやトランプや金正恩が戦争を始めることも無きにしも非ずです。
あまり不安を感じないよう生活したいですが、最悪のシナリオにならないようにしなければなりません。
人々の叡智を信じるしかありませんが。
16世紀の大航海時代、18世紀後半の産業革命を経て西洋型近代文明となり、今の環境問題を引き起こした。人が何でもでき自然を破壊する時代を「人新世」といい、それは1950年ごろに始まったという。
著者は、パンデミックによりこの人間中心主義への警鐘が鳴らされていると言う。
人類は地球システムの機能を狂わせ、自然の巨大な力に匹敵する存在になったかもしれませんが、自らの弱点、無力さを露呈することになっている。
コロナの暗号
こうした「新型危機」はまだまだ起こると言わざるを得ません。
ジャック・アタリ氏も、「深刻な危機に直面した今こそ、『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきだ。その理想への転換こそが人類サバイバルのカギである。」と言っている。
そしてこの危機は新しい世界が作られていく変革のチャンスである。
コロナの暗号
ピンチをチャンスにしたいですね。
自国ファースト、人類ファースト、自分さえ良ければではなく、利他の考えにならないと結局は自分にも返ってくる。
自分の会社の発展のために商売をしても、社員や社会が貧しくなればその商品を買える人がいなくなる。子どもを持つ人がいなくなる。こんなマイナスの連鎖をひっくり返したいですね。うーむ。
また、著者が日本で研究成果が思わしくなく、アメリカに行き自由に研究できるようになったら良い成果を得た話。その話を不登校の子ども達にしたら皆が目を輝かせて立派なお礼の手紙を何人もがくれたエピソードなども。
社会が高度化すると厳しい社会になることはわかっていたけれど、いろんなところで硬直的にならずに寛容な生きやすい社会になってほしいですね。みんな頭ではわかっているのになぁ。
著者には他にも以下の本があります。
そんな村上和雄先生は、2021年4月にご逝去されたとのことです。合掌。
尊敬してやまないDeNAの南場智子さんは、年初にこう言っていた。
「3~5年前に世界のビジネスリーダー達に会うと、話題はもっぱら地球温暖化の問題だった。その頃の日本のビジネスリーダー達はそんなことにはまるで興味がないかのようだった。しかし、今は環境問題は日本でもビジネスのトップレベルの話題になった。これからが大切だ。」
ジャック・アタリ氏「命の経済ーパンデミック後、新しい世界が始まるー」↓