この本は、第一冊が2020年10月16日に発行されました。使用したデータは2020年7月16日時点のものとのことです。
欧州最高峰の知性と言われているジャック・アタリ氏がロックダウン下のフランスで書き上げ、日本語版刊行を前に最新のデータで加筆を行ったとのこと。忘れたくないところを記します。
「コロナ終われ~」と思っていました。終わったらまた海外旅行もしたいなんて思っていましたが、次のパンデミックが来るかも。。世界経済は厳しい未来が待っているかも知れません。興味のある方は是非↓
疫病の歴史
本書はまず疫病の歴史から始まる。
紀元前5000年くらいまでの間に、人間がある程度密集して暮らすようになったため、疫病が発生するようになった。家畜化した動物がウィルスや細菌などの病原体を人間にうつすことは、まだ知られていなかった。
大航海時代と共に、天然痘、ハンセン病、麻疹(はしか)、結核、マラリアなどがヨーロッパからアメリカ大陸に持ち込まれた。その後、世界で黄熱病、梅毒、ペスト、コレラと世界中に広まり、大勢の人々が命を落とした。1889年にはインフルエンザが世界中に広まり1890年代末には36万人を死亡させた。インフルエンザはその後スペイン風邪、香港風邪と名前を変えて跋扈した。
スペイン風邪では世界人口の3~6%が死亡したらしい。
どの国も一国の努力だけでは国を守れなくなり、1945年に国際連合が発足し、その後世界保健機構(WHO)が設立された。
昔も、疫病の流行の後は不況に陥った。
そして、エボラ出血熱(感染した野生動物の肉を食べたことから始まったと言われる)や、エイズと続いた。2002年、中国南部で動物由来のSARSが出現した。MARSは、中東から始まりラクダから人に広がった。
ほとんどの疫病はやはり動物由来のようですね。
感染爆発を許した背景
ジャック・アタリ氏によると、
1.世界各地では医療制度が脆弱化されてきた。その原因は、医療制度を国の財産ではなく負荷だとみなすイデオロギーにあった。
2.世界はこれまで以上に開放的になり、相互依存が進んでいた。人やサービスもグローバル化された。
3.自己満足し自らを過信した人類は、「悲劇は起こり得る」という感覚を失っていた。
4.既に20年以上にわたり、利己主義、偏狭な視点、軽薄、不誠実、不安定で溢れ返っていた。過剰な富、深刻化する貧困、投機行為、資源の無駄遣いなどなど。本質を追求しようとする意欲は失われ、将来世代の利益は顧みられていなかった。
5.世界人口の45%以上は満足のいく衛生設備を利用できておらず、見捨てられた存在となっていた。
これからどうなる
医療面の解決策は歴史に学ぶまでもなく「ワクチン」と「治療薬」の開発だ。
経済危機の方は、、、実態経済の危機でありこの大きさは計り知れない。いまだにほとんどの人がこの危機のあまりの深刻さと多面性について把握できていない。
アタリ氏は言う。元に戻るということは楽観的な幻想だ。多くの国では新たな暮らしに国民を誘導するのではなく、物事が危機発生以前の状態に戻るのを待てばよいという安易な考えに誘導した。
新たな世界に適応する者だけが勝者になる。この危機が自然消滅することはない。
生活基盤が脆弱な人や貧者に危機の代償を払わせる準備が進行する。中間層にも危機の後始末が押し付けられ彼らも貧困に転落するに違いない。旅行代は高くなり、海水浴へ出かけるのは難しくなり、健康によい食材も値上がりするだろう。
命の経済
歴史を見ると「保護主義への回帰は衰退への道」だ。古代ギリシャ、古代ローマ、14世紀の封建社会、17世紀のジェノヴァとフィレンツェ、18世紀のアムステルダム、20世紀初頭のイギリスなど表舞台から消えた。
アタリ氏は、今回の危機でアメリカに代わって中国が覇権国になるとは思わないと言う。両国は衰退し、覇権国なき世界に向かう変化が加速すると考える。
長期的に見れば、中国式の監視型強権政治モデルはやがて行き詰まる。これまでにも世界ではほぼすべての一党独裁体制が瓦解したように、より大きな自治と自由を求める中間層の反乱により、それは打破されるだろう。
パンデミックでさらに巨大化したGAFAM。
人々の価値観は過剰にぜいたくなモノを買うことは人生の目的でないことに気付き、幸せの源泉について考えるようになった。景気を後退させずに気候変動を解決させるには今までとは違うやり方をしなければならない。
海洋汚染、集約的な農業、生物多様性、貧困、飢餓、教育機会の欠如、社会的弱者に対する暴力など危機は多く存在する。
中略・・・
自宅待機は自己と向き合う貴重な機会となったはず。危機後に訪れる新たな世界に備えよ。
未来の企業像
パンデミックを通じて、我々はすべての生命が相互に依存していることを学んだ。
従業員は消費者と同様に感染症が広がらないよう配慮することが企業の利益につながる。
エッセンシャルワーカー、教員、レジ係などの賃金を上げ環境を整備し雇用を増やすこと。
テレワークが定着し、2035年頃には10億人がノマドワーカーになるかも知れない。アメリカでは60%の職業は自宅で遂行可能だと見積もられている。地価の高い都市部のオフィス街に密集する必要はなくなる。
ほとんどの創造性は偶然の出会いや不意の会話から生じる。ヴァーチャル会議やカフェなど質の高い交流の場が必要。
メタバース?!
企業のオフィスは空間にゆとりのあるホテルのような居心地を提供するようになるだろう。
高齢者施設や病院もホテルのような居心地を追求するようになるかもしれない。
パンデミックへの対応において非営利組織が大きな役割を担った。これらの活動を大幅に発展させるべきだろう。
大切に扱うべき唯一のものは時間だ。
命の経済
アタリ氏の提案が書かれています。長くなるので箇条書きで記します。
地球温暖化対策のため肉の消費量を減らす。太り過ぎない。スポーツをする。地元産野菜・近郊の魚を食べる。
一極集中の是正。大型商業施設の統廃合。手を触れずに扉を開閉。再生可能エネルギーの利用。
多目的室を避難所に、会議室を野戦病院に、バカンス村を隔離施設に転用可能に。
多くの企業は大都市を離れ、本社を中堅都市に移すだろう。
教育の重要性は一層増す。
自動車、航空機、工作機械、ファッション、化学、プラスチック、化石燃料、ぜいたく品、観光は過去の市場から軌道変更する必要がある。巨大なバカンス村やキャンプ場は宿泊施設を減らし高齢者施設、医療サービスとしても利用可能に。
次のパンデミックへの準備、また気候変動がもたらす次の大惨事への準備をしなければならない。それが民主主義をも破壊しないようにしなければならない。
森林並びに野生動植物種の生息域の破壊は、病気が蔓延するリスクを高め、パンデミックの発生リスクが高まる可能性がある。
温暖化により蚊の生息地が大きく変化し、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱、マラリアが広まるかも知れない。
闘う民主主義へ
1.代議制であること
2.命を守ること
3.謙虚であること
4.公平であること(特に税負担の公平性)
5.将来世代の利益を民主的に考慮すること
読後、なかなかに絶望感に襲われましたが、まだまだ生きていくために考え続けなければいけません。
この本は、2020年10月16日に発行されたものです。その後ウィルスの変異でオミクロンとなり弱毒化し、日本で死者は減っている現状ですがいろいろ備えないといけません。
経済が回り、地球温暖化も緩和し、地球環境も改善され、子ども達の未来に希望が持てる世界になりますよう。