「パキータ」のエトワールというバリエーションをYouTubeで探していました。するとミコ・フォガティという方の美しい踊りが見つかりました。表現力がすごいので、きっと今はどこかのバレエ団で活躍しているに違いないとちょっと調べてみたら。(動画はこちら・2015年ローザンヌコンクール YouTube)
とても示唆に富んだ人生を送られていたことが彼女のTEDスピーチでわかりました。
ひと言でいうと、「人生のいつどの段階でも、例え大変な努力をして多くの時間を費やし(またはたくさんの人のお陰で)今の立場を得ていたとしても、心から望む自分の人生ではないと気付いたならばやり直そう。」です。
2020年、彼女はカリフォルニア大学バークレー校の医学生となっていました。
彼女はスピーチの冒頭で老子の言葉を引用しています。↓
When I let go of what I am, I become what I might be. (Lao Tzu, Philosopher)
私が何者であるかを手放して初めて、自分が何者であるかがわかる。 (哲学者 老子)
4歳の時にアメリカで、母親とマリインスキーのバレエ公演を観て魅せられ、バレリーナになると決めたミコさん。お母さんは日本人です。それから来る日も来る日もバレエに明け暮れ、ついには公立学校もやめてオンライン学習にしたほど(かなり先取りされています)。
お友達と会えないのは辛かったけど、バレエを選んだそう。多少の犠牲は仕方ないと割り切ったそう。子どもなのにすごい。
12歳の時、映画「ファースト・ポジション」というバレエを目指す子どもたちのドキュメンタリー映画にも出演されました。子どもの時からバレエを目指すのは本当に過酷です。
ニューヨークのアメリカン・バレエ・シアターで夏季集中レッスンを受けた際に、1冊の冊子をもらった。それが後に転機のヒントとなる「The healthy dancer.(健康なダンサー)」でした。
おそらく身体の仕組みや栄養などの本ですね。
その後、ロシアで開かれたモスクワ国際バレエコンクールで優勝した後、思春期となり身体が変化したため太らないよう食事制限を始め、プレッシャーが増えた。
それでも歩み続け、世界中のバレエ団のオーディションを受けて、17歳の時にイギリスのバーミンガム・ロイヤル・バレエ団と契約した。一握りの人たちしか行けない場所まで行った。すごいことです。
バレリーナとしてのスタートを切ったが、ワクワクした気持ちはありながら、心の中では葛藤もあった。
たとえこのキャリアを歩み続けたとしても、精神的にも肉体にも、全く幸せでないと思ったのです。
TED TALK (フリーランス通訳者・Naaさんのサイトより)
でもわたしはガッカリさせてしまうことが怖かった。
自分だけでなく、周りの人々、たくさん投資をしてくれた家族、10年間みてくれた恩師、世界中から応援してくれる人達、周りをもがっかりさせてしまうことが、怖かったのです。
だからわたしは進み続けました。
その後、日本で夏季レッスンを受けていた時、足の指の骨を骨折してしまった。
そして2か月間レッスンを休まざるを得なくなった。
(今まで1週間も続けて休んだことがない(!)のに。)
でもこの思わぬ休養期間は、いろんなことを考えるきっかけになりました。そしてバレリーナとしてのアイデンティティがだんだんと溶けていくのを感じたのです。
TED TALK (フリーランス通訳者・Naaさんのサイトより)
驚くべきことに、バレエだらけの日々から抜け出し、力が湧いてくるような安堵感を覚えたのです。
ようやく自分が本当にやりたいことを考えることができた気がしました。
そこにもはや自身の情熱がないことに気づいたのです。
そのときに私は12歳のときにもらった本 The healthy dancer(健康的なダンサー)を思い出しました。ケガがどう回復するか、どうケガを防ぐのか、こういったことを面白いとおもったのです。そして『ケガや病気からの回復』を通じて、他人の人生に関わりたいと思うようになったのです。
それと同時に、バレエ団をやめて医学生になった別のバレリーナのインタビューも見ました。これが、わたしが道を切り替えるための最後の後押しになりました。
彼女は今、バレエ漬けの生活からは離れたが、次世代にバレエを教えたり、あちこちでレッスンを受けたり、生活にバレエを存分に取り入れることができていて満足だそう。
もしあなたがいま自分に満足できていないのであれば、違う道を選ぶに遅すぎることはありません。
TED TALK (フリーランス通訳者・Naaさんのサイトより)
自分にやさしく、変化に対して柔軟であってください。
わたしたちは静的な彫像ではなく、わたしたちは生きていく中でいつだって自分を変えて、進化させることができる存在なのです。
どうか、自分のアイデンティティをかえることを、恐れずにいてください。
★翻訳全文はこちら(フリーランス通訳者・Naaさんのサイトより)
→【ミコフォーガティTED全文翻訳】バレエからのキャリア転換
彼女の気持ちになってみると、4歳から毎日バレエ漬けで多少飽きたのかも知れませんし、違う勉強したり、他の世界を見たくなって当然だと思います。
特に今、過酷な状況で我慢を強いられている人がいたら、または今やっていることに違和感を感じたら、自分が本当にやりたいことは何かを自分に問い直してみる時間を持つことをおすすめします。
あなたを大切に思う家族や回りの人もきっとわかってくれます。
どんなに好きなことでもひとつのことを毎日毎日やり過ぎていると、幸せではなくなるかも。いろんな経験は視野を広くしてくれるし。
たった一度の人生です。