「日本銀行 我が国に迫る危機(著:河村小百合)」を読んだ。日本は大丈夫なのか

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日曜討論をよく観る。政治家や専門家が出てきて、今の政治問題や改善策等を話し合う番組。そこで経済問題がテーマの回で、いつも早口でぶちかましてくれる河村小百合さん(日本総研主席研究員)。特に黒田日銀の金融緩和について、歯にきぬ着せぬご意見が多かった。それを聞いて心配になる輩も多かったと思う。

黒田日銀は植田日銀に変わったけれど、異次元金融緩和路線はまだ続いてはいる。

なぜなのか。

日本銀行 我が国に迫る危機」(2023年3月20日第1冊発行)を図書館で借りて読んだ。

河村小百合さんは、京都大学法学部卒業後、日本銀行入行。3年後に日本総研に移り今に至る。日銀にいた時にいろいろ得ていた情報があるのだと推測する。

肝心なところを私なりに簡単にまとめると、、

世界の各国はこの日本の「10年に渡る異次元金融緩和による世界初の実験」を、じっと見ていた。そして思ったように行かないことを見て取って学びとし、自国の経済政策はこうならないように微調整を続けている。

ということらしい。

2021年の秋、当時財務事務次官だった矢野康治氏が月刊誌に下記の投稿をし話題になった。

あえて今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。・・・・
この破滅的な衝突を避けるには、「不都合な真実」もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます。

日本銀行 我が国に迫る危機

そして、

2008年のリーマンショック後、この金融危機の震源地であった欧米各国ですら財政再建努力を加速させたのに、我が国のみが「まだデフレ状態にあるから」という甘えた言い訳をして、政府債務残高が積み上がる一方だというのに、黒字化目標の達成先送りを続けてきたのです。

日本銀行 我が国に迫る危機

詳しくは本を是非読んでいただきたい。

我が国は過去に借りた国債の満期が到来してもその大部分を借り換えで済ませている(普通国債残高全体の1%に達しない額)。それもすべて日銀が巨額の国債を買い入れ、しかもイールド・カーブ・コントロールをやって、10年国債金利をゼロ%近傍で抑え続けてきたからできていた。

日本銀行 我が国に迫る危機

・・・ここで日銀が赤字に転落し、円安も進んで、もうこれ以上、国債を買い入れるわけにはいかなくなりました。となったら、デフォルトを避けるために利払いを何よりも優先しなければならなくなる。

そして、現在の歳出から一律4割カット(借金分)しなくてはならなくなる。社会保障費・防衛費・義務教育の国庫負担金も地方交付税も。。。公務員の給料も。そして、私たち国民が今よりも、増税の負担に耐えなければならなくなる。こういう厳しい事態となるとのこと。
・・・怖くないですか。


そして、「第3章 異次元緩和とはどのようなものだったのか」と続く。(内容は省略)


そして、最も怖いのは、政策のツケをいずれ我々国民が支払わなければならなくなることだ。

「第6章 事実上の財政破綻になったら何が起きるか。-戦後日本の苛烈な国内債務調整」では、戦後、国民の資産を、貧富の差なく、徴税権行使の形で吸い上げた「財産税」について書いてある。

「敗戦による事実上の財政破綻の穴埋め」のために、まずは「預金封鎖」で国民の資産を差し押さえし、新円切り替え(通貨交換)が実施された。

私の母は、現在94歳なのだが、若い時、新円切り替えのことをよく話していた。「戦後、今までのお札がね、急に使えなくなってね。そりゃあ大変だった。」と言って、百円札等を見せてくれた。こども心によく覚えている。
いわゆるデノミネーションである。ハイパー・インフレーションになった国では、インフレの深刻さから少しでも国民の目をそらそうとデノミを行うことがしばしばあるらしい。
実際、この時の預金封鎖は、後の財産税課税のための調査の時間かせぎのためであった。

そして政府は国民への戦時補償も踏み倒した。その後、財産税法が公布され、不動産等の現物納付が認められた一方で、先行して差し押さえられていた封鎖預金も充当されたという。

現在、日本の財政事情は敗戦直後と同レベルまで悪化している、と著者は言う。
おそろしい。

なお、同じ敗戦国だったドイツとオーストリアも、預金封鎖と通貨交換を行った。しかしドイツは現在は、先進国の中でも屈指の健全財政国である。ドイツはこうした歴史と教訓を教育を通じてしっかりと国民に伝え続けているからこそ、国民が痛みを伴う財政再建路線を支持している。これに対して、我が国では高校の教科書でも今日に至るまで「当時の預金封鎖はインフレ抑制のため」とだけ書いているらしい。
うそをついて平気で国民をだます政府、と思われても仕方ない。

最近では、アイスランドとキプロスとギリシャで財政破綻が起き、資本移動規制が行われた。(詳しくは省略)

日本でも預金封鎖や通貨交換がこっそり仕組まれるかも知れない。預金封鎖と通貨交換を同時に行うのは、タンス預金もさせないため、らしい。

このブログではあまりマイナスな気分になるものは書きたくないのだが、まだまだ国によって隠されている不都合な事実が多いのかもしれない。自分が学んで少しでもわかったことは書かなければならない。

日経新聞の私の履歴書に今月、黒田東彦氏が書いているようだ。果たしてどんな言い訳を書くのだろう。

日本銀行 我が国に迫る危機
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