約4年前、ある企業のwebマーケティング部にいた時、セールスフォース(Salesforce)を導入することになりました。その時の備忘録を記します。
Salesforce・セールスフォースは、クラウドベースのCRM(カスタマー リレーションシップ マネジメント)・SFA(営業支援)サービスの一つで、アメリカに本社を構える株式会社「セールスフォース・ドットコム」によって提供されています。お客様を大切に何度もおもてなしする的なツールです。
営業の方が最初にお客様をひとりひとり登録(会社名・電話番号・会社所在地・役職など)し、商談・見積もりや見込みや売り上げを記録していき、DMを送ったり、お客様の成約見込みをAI(アインシュタインという名のAI)でも測れます、というツールです。
私はSalesforceのPardotというCMSでランディングページやイベントページを制作していました。そのページをリンクしたDMをお客様に送信したりもしていました。
4年前当時も今もセールスフォースは大人気のようです。現在、世界と日本で導入実績No.1とのことです。企業ブランディングがとても良くできていて万能感があります。導入したら受注や売り上げがアップしそうと誰もが思うスマートさを持っています。イメージ戦略が成功している好例です。現在は特に企業のデジタル化を言われ、BIツールは必須という共通認識がありますし。
「大手町近くを歩いていたら、すれ違う人が「セールスフォース・・・うんぬん」と言っているのを何度か耳にしました。とても知的で高機能なイメージがありますね。
Salesforceのクライアント向けセミナーに行ったことがあります。パフォーマーの演技があったりアメリカっぽい演出で盛り上がります。アメリカから来た役員(女性もいました)によるTEDのような英語のプレゼンテーションで、同時通訳器も貸してもらえました。セールスフォースジャパンの社長とYoshiki(元・Xジャパン)が対談していたこともありました。PR・広告にお金もかかっていそうです。笑
かっこいーー!
Salesforceは、アインシュタインというキャラクターのAIを導入しています。ものやサービスがどんどん売れそうです。親しみやすいキャラクターにも好感が持てます。
セールスフォースは基本的に営業さんが、クライアント情報をひとりひとり入力していくので基本的には「B to B」向けと思われます。ホームセンターや出版社などの「B to C」には向かないかも。(個人的見解です。)
ここから先は、実際に見聞きしたことを書いていきます。
セールスフォースを導入すると最初は営業さん達から「以前より仕事が増えた」という文句が出るようです。しかしwebマーケティング担当としては、「情報を入力して使っていけば、情報を他の営業とも共有できて便利になるので辛抱してください。」とお願いすることになります。辛いところですが仕方ありません。
しかも最初は紙で記録を付けるのと、Salesforceの両方をやるので確かに手間のようでした。
また、今まで使っていたBIツールとの互換性がぴったり合う訳ではないので、両方にデータを反映させるのにひと手間ありました。結局、人がその穴を埋める作業をします。そういうことは導入後にわかったりします。何十年も続いてきた会社にとって、デジタルの過渡期は何かと大変です。
(導入・維持費用も決してお安くはないようです。。良いものは高い?!)
一旦契約し導入すると、毎月お金がかかり、関連するサービスも出てきて、使う社員も増えていき、離脱するのが大変かもしれません。(個人的見解です)
アインシュタインというAIツールは、エンゲージメントという名で受注見込み(リード)を計測していました。例えばDMを送ったうち、開封した人にスコア(ポイント)をつけていくといった制度で、何度もDMを送っているうちの開封率が高い人、イコールスコアが高い、つまり見込みが高いお客様ということになっていました。アインシュタインがそれを教えてくれます。使い方セミナーに行って聞いたところによると、見込みが高い方には電話でアプローチしましょう、という流れになっていた会社事例もありました。
ただ、メールを開封したからというだけでその商品・サービスを買うことにつながるのか、という疑問は残りました。私がいた会社は、専門性の高いサービスを売っていたので特に。
「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」
You can take a horse to water, but you can’t make him drink.
ということわざを思い出しました。
他にも、商談が成立した人はスコアが高くなると記憶していますが、導入後数年経たないとデータが蓄積できないのですぐには利用できないようでした。3年ではまだまだのようでした。もっと何年も使っていれば良い提案をしてくれるかも知れませんね。
人間がAIを使うことの難しさってこういうことかな、って少し思いました。
機械的に何回メールを開封したかだけではなく、営業さんって長いお付き合いのお客様の表情や会話・声のトーンで直観的にいろいろわかります。人間同士のお付き合いの中で信頼しサービスを買う、ということもありますし。安直に人をわけわからんAIに置き換えるのではなく、深く考える必要がありそうです。
まあ、営業さんも移動もあったりしますから一概には言えませんが。
こんな時代だからこそ人間同士の信頼関係も大切にしたいですね。
AIのデータ VS. 人間の直観・第六感??
出版関係の会社の広報室にいた時も、Salesforceの代理店さんがガンガン前のめりに営業に来られていました。ただ、その会社では、「何かBIツールは欲しいが、Salesforceは重機過ぎる。」と言って採用しませんでした。やはり、商品・顧客によりますね。
また、Salesforceの管理画面をカスタマイズする担当者は、少しプログラムの知識があった方が良いようです。広報などとの掛け持ちだと多忙になってしまうかも。社内にそういったリソースがない時はカスタマイズもweb代理店に依頼することになり別途料金が発生します。
日本企業は上層部がITに詳しくないご高齢の方も多く、IT担当者が説得に成功し導入するも、「費用が高いシステムを追加で使うことになりどんどん高くなり大変。」と聞いたこともあります。雪だるま式にならないよう気を付けたいですね。
下記のような表現もありましたのでご参考までに。。
昨今、米国を中心にして「FIRE」というコンセプトが人気です。これは缶コーヒーのことではなくFinancial Independence Retire Early、つまり「経済的に自立し、早期リタイアする」という意味です。
President online なぜ富裕層はいつでも早期リタイアできるのに「FIREに目もくれない」のか
ちなみにこういうアルファベットの頭文字を使ったキーワードが出てくるときは要注意。必ずそれを商売にしようという人・企業が出てくるからです。
ビジネスの世界でもたとえばCRMとかSFAなどと、内容はごく当たり前のことなのですが、それを導入すればあたかもあらゆる問題が解決する魔法の道具のような響きがあり、ITベンダーのカモになってしまうというアレです。
私は、Pardot というCMSでランディングページを作る係だったのですが、当時はデフォルトでレスポンシブできない仕様でしたので、Bootstrapを入れて無理やりレスポンシブさせていました。こちらもHTML・CSSの知識があった方が良いです。
Salesforce、導入後数年かけてデータを蓄積できれば、業界によっては使いこなしていけば、万能ツールになりそうですね。