「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」「春にして君を離れ」

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読書録。人の一生にはいろいろある。楽しいことばかりであるはずはない。時にどうしようもなく辛いことも普通に起こるのが人生だ。

① 辻仁成氏「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」(2022/6/30第一刷発行)。只今ベストセラー。
パリに暮らす著者。息子が10歳の時に息子の母親は家を出て行った。その息子が18歳になるまでを「父ちゃん」目線で記録している。パリでの生活が興味深い。パリでは小学校卒業までは親が送り迎えしなくてはならない。
著者は福岡出身。ミュージシャンであり小説家。現在63歳なので、45歳で生まれた子なのかぁ。
笑顔がなくなってしまった息子に美味しい料理を作ることで育ててきた著者。

息子が友達家族のところに長期で泊まりに行った時の帰り道に言った。「家族っていいよ。パパは誰かいないの?他にも家族を探したほうがいい。」説教されてしまった父ちゃん。
「一人が好きだし、ご存じの通りなかなか難しい人間だからね。パパはもう期待してない。期待しすぎるから、人間は苦しくなるんだよ。」という父に、大人になった息子は言った。

「・・・・・・・
パパ、他人に期待してもいいんだよ。期待しないだなんて、思うからうまくいかなくなるんだ。知ってるよ、パパがいつも最後は人を許していることを...。でも、そろそろ、パパも誰かに期待をして生きてもいいんじゃないの?」

「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」

泣ける。フランスのママ友たちや街の人々に助けられてやってきた著者。
著者のブログによると、そんな息子もついにパリで大学生になって家を出て行ったらしい。レストランでアルバイトもしているそう。

先日のNHK「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022夏」も観た。ミュージシャンとして唄っているところも初めて観た。忌野清志郎を彷彿とさせる歌声であった。

人間って子どもの時は頼りなくハラハラさせられても、ちゃんとたくましく立派な大人になるからすごい、と思う。

昔、著者のこれを読んだ。細かい内容は忘れたが、福岡の子ども時代などが鮮やかに書かれていたと思う。うちも家族で福岡に住んだことがあるので面白かった。↓


② ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(2021/6/24)
こちらは英国の南にあるブライトンという街に20年も暮らしている日本人の著者の、主に息子の学校生活の話。ノンフィクションで数々の賞を受けた本。こちらもイギリスの学校に子どもを通わせるとこうなのかと興味深い。
父親はアイルランド人なのだが、息子はだんだん大きくなるにつれ日本人っぽくなってきたらしい。
小学校はカトリックの学校だったのだが、中学で自由そうな底辺校(著者いわく)に進学することで、貧しい家の友達がいたり、差別されたり、いろんな体験が語られる。

息子の水泳の大会を見に行ったり、バンドのコンサートを観に行ったり、学園祭を見に行ったり体育祭を見に行ったり自分もしたなぁ。制服リサイクルの話も。自分の子育て時代を思い出してドキドキしてしまった。子育て時代は晴れがましく、毎日ハラハラドキドキ生きている実感を感じたものだ。

いろんな思いができて子育てして良かったとホント思う。この点だけはいつ死んでもいいくらい幸せだ(まだまだ生きるけど)。

この本を読んで、子どもの頃に読んだエドモンド・デ・アミーチス作「クオレ」を思い出した。「クオレ」は、イタリア(統一戦争を終えてまもなくの頃)の小学生エンリーコが経験する学校での出来事などのお話で、愛・思いやり・勇気等が詰まった本。感動の不朽の名作。まだ読んでない人におすすめ。
名作「難破船」等が収録されている。そういえば昔「難破船」を息子達に読み聞かせしたら次男に「こわいからもうクオレはやめて」と言われてしまったのだったが...。

以上、おすすめ本。


③アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」

この本は子育て本ではなく、ミステリーでもないのだけれど、備忘録。
人生にはいろいろあり、うまくいかない時は辛くても謙虚に受け入れてやり直そう、という内省的なものだった。両目を見開いて真摯に現実を見なければならないという示唆に富んでいる本だ。見える部分も見えない部分も。
さもないと皆が、後々不幸になってしまう。
アガサ・クリスティー自身の結婚・失踪・離婚・再婚などの経験から書かれた寓話のような話かもしれない。

解説(あとがき)において栗本薫氏はこの本を「哀しい本」「恐ろしい本」と書いていた。

パリの空の下で、息子とぼくの3000日
パリの空の下で、息子とぼくの3000日