精神科医・名越康文氏の本を久々に読んでみた。2017年の著作。備忘録。
なぜ私たちは疲弊してしまうのか。
「人は皆、群れの中で生きている。」
私たちは常に「家族」「会社」「学校」「友達」などの「群れ」の一員として生きている。
特に日本人は他人の期待に応えようとしがちだ。時に「過剰適応」を起こすこともある。疲弊してしまうほどに。。
名越氏は、精神科の外来でそういう多くの人を診てきたそう。
会社でも「阿吽の呼吸」「空気を読む」ことを常に求められる今の社会。実はかなり細かい高度なコミュニケーション能力を求められている。疲れる訳だ。
「人のための時間ばかりを過ごしていませんか?」
ひとりでいても、「心の中の他人」の声に翻弄されていませんか?
と著者は言う。
人にとって、「ソロタイム」は大切な時間だ。時にはひとりになり「心の声に耳を傾ける。」ことが必要だ。そうすると自分が本当にしたいことが何か見えてくる。
普段自分が過ごしている「場」や「空気」から離れないと、群れの疲れは癒すことはできない。
仕事や家庭が忙しく充実していても、時に虚しくなることがある。著者にもそんな時があった。そんな時は公園でひとりの時間を過ごしたという。
「人生を変える「第二の自己実現」が必要」だと著者は言う。
群れの中での自己実現だけでは、人は虚しさから逃れることができない。群れの中での自己実現はほどほどにして、群れの外に目を向けてはどうか。そこで好きなことに没頭し「ソロタイム」を過ごす。それ自体がその人の人生を輝かせ、幸せをもたらしてくれると名越氏は言う。
名越氏のTwitterをフォローしているので、彼がライブで音楽をやっているらしきことは知っていたが、なるほど、その理由も腑に落ちた。
人生というのは本来、自由なものであり、自由に生きるからこそ、輝くものです。
「ひとりぼっち」こそが 最強の生存戦略である
動物園の動物たちは、野生の半分程度しか生きられないと言われます。
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あなたは今、動物園の中でやせ細っていくライオンのように、人生の火を燻ぶらせてしまってはいないでしょうか?
群れから離れて過ごすひとりぼっちの時間、すなわち「ソロタイム」だけが、群れの中で生きる中で眠らされた、あなたの本当の活力を目覚めさせてくれるのです。
「人間というのは本来、どう生きたってかまわない。」のです。と、著者は言う。
本当の才能は、群れの中では決して評価されない。
エジソン、ライト兄弟、スティーブ・ジョブス、アインシュタインなどの「本物の天才」たちは社会的に認められるまでは周囲から「変人」「役立たず」と言われていた。群れの中で評価されない「感性」の中にこそ「才能」の本質が宿る。
子どもの「才能の芽」を摘まないためには、「集中(ソロタイム)を妨げないこと」と、生き延びるために「社会に適応する方法を伝える」ことが大切だという。
「才能」の開花とは、社会的に成功することではなく、それ自体がその人の人生を輝かせ幸せをもたらしてくれることだ。できなかったことができるようになり、見えなかったものが見えるようになる。それは自己イメージを乗り越え、それまでと違った世界観を手にするということ。それは心理学的にみて、他では得られない大きな喜びを与えてくれる体験だ。
本当の意味での人生の充実感は、お金ではない。
そういえば私も長年、好きなデザイン分野の仕事をしてきてそれなりに充実していたとは思うが、今は仕事とは全く別の「踊り」を習っている時間が楽しい。舞台で踊りを観たり、身体を作ったり、自分なりに少しずつできるようになるのが楽しい。
ついでに本を読んで世界が広がるのも好き。美しいものや建築、物語、自然も好き。まだまだ冒険もしたい。笑
群れのメンバーは、互いに似る。
お金のあるなしに関係なく、暗く、敵意に満ちた世界観の中で生きている人が、前向きで明るい世界観を持つことはそう簡単なことではない。
「群れ」を離れ、旅に出てみよう。
旅に出られない時は、部屋を掃除し、断捨離してみよう。旅に近い効果がある。
相手を見下すのは典型的な「群れ」の思考。
人生を変えるような大きな決断をする前には、「群れ」から離れ「ソロタイム」を過ごすこと。
私たちは決して「他人を変える」ことはできない。自分のタスクに取り組もう。
自分のタスクの中でも優先して取り組むべきことは「自分の心を落ち着ける」こと。心は何の脈絡もなく変わり続ける。まるで「暴れ馬」のようなもの。
細かな判断の積み重ねで人生は変わる。感情に流されて生きるのはやめよう。
感情の9割は「怒り」。
小さな怒りの感情は、「さっ」と払ってしまおう。
「今ここ」に集中することが大事。
本やインターネットからさまざまな情報や知識を得るのも大切だが、人生から虚しさを払い、本当の知恵にたどり着くために著者が経験として勧めるのは、「瞑想」。
古来、多くの賢人たちは、「本当の知恵」は自分の内側にあると語ってきた。
瞑想は、群れから離れ、ひとりぼっちで自分の内側と向き合う時間だ。
直観を研ぎ澄まそう。人生には、論理や知識、経験では太刀打ちできないことが起きる。
私たちが感覚で察知する「微妙な違い」。それを感じ取れるかどうかがこれからの時代、私たちの人生を大きく左右することになるでしょう。
「ひとりぼっち」こそが 最強の生存戦略である
人生のもっとも大切な選択は決して理屈で選ぶことはできない。
他人の意見や理屈に頼らず、躊躇なく、直観的に選ぶことができる。そんな自分をぜひ手に入れてください。
「ひとりぼっち」こそが 最強の生存戦略である
大丈夫。ひとりぼっちの時間を充実して過ごせるようになったあなたは、もう「選べる」ようになってきています。そして人生の岐路を迷わず選べるようになったあなたは、もう胸の奥に深い虚しさを感じることはなくなるでしょう。
家族や友人、同僚に対して、毎回「初めまして!」という気持ちで接する。
でも、忘れてはいけないことは、人生の中でもっとも美しいものや、素晴らしい出来事もまた、群れの中で起きるということです。
「ひとりぼっち」こそが 最強の生存戦略である
そして、人生の良いことも悪いことも、どちらも目いっぱい楽しむためには、「ひとりぼっちの時間」が必要だということです。
「周囲の人やモノを、味方に変えていく」ことは必要。
明るく挨拶をする、分かち合う、ほんの少し背伸びして周囲に貢献する。他人と何かを分かち合い、次の瞬間にはそのこと自体を忘れる。これができるようになってくると、群れの中で生きていくことが、ずいぶん楽しく過ごしやすくなると著者は言う。