「無理ゲー社会」(著:橘 玲氏)備忘録 「実力も運のうち 能力主義は正義か?」

book/考えごと//////
  1. ホーム
  2. book
  3. 「無理ゲー社会」(著:橘 玲氏)備忘録 「実力も運のうち 能力主義は正義か?」

日本より100年(以上)進んでいるはずのアメリカで2017年、なぜトランプなんぞが大統領に選ばれてしまったのかずっと謎であった。発する言葉は品性が疑われ、「アメリカファースト」と連呼して、当時地球温暖化は嘘だと言っていた。金ピカのトランプタワーからもセンスと知性を感じることができなかった。

無理ゲー社会」(著:橘玲氏)を読んでその理由がわかった気がする。

アメリカ国内であまりにも広がった格差の行きつく先。
能力主義、学歴格差の果てなのかも知れない。
これは資本主義の限界かも知れない。良き資本主義と民主主義のあり方が問われている。
アメリカも日本も。

以下、忘れたくないところを記す。

日本やイギリスと違って、アメリカは身分や階級がないところで人工的に作られた国家で純化されたメリトクラシー(能力主義)社会になった。アメリカではこの学歴格差が先進国としては異常に広がっている。日本では大卒・大学院卒の男性の生涯賃金は2億6980万円で、高校卒の2億910万円より30%多い(2018年)が、アメリカはもっと極端で、70~100%(2倍)とされる。

無理ゲー社会

しかし最近アメリカでは、超高い学費を払って大学を出たとしても高い地位の仕事に就けず、ウェイター・販売員・スーパーのレジ係等々に就く人が増えているらしい。(そんな彼らは前回の選挙で民主社会主義者のバーニー・サンダースを支持した。)

トランプの岩盤支持層である「白人至上主義者」たちは自分たちこそがアメリカ社会でもっとも差別され、虐げられていると思っている。ホワイトハウス襲撃事件の一年前に公開された映画「ジョーカー」では、白人の主人公を「最底辺」にしたことで彼らの世界観に危険なほどよく似たものになっていた。

無理ゲー社会

現実として、アメリカでは非大卒は大卒より2倍も絶望死による死亡率(自殺、薬物過剰摂取事故、アルコール性肝疾患)が高いらしい。

メリトクラシー(能力主義)が支配する社会では誰もが「知能と努力」によって成功できるとされる。史上はじめて「黒人大統領」となったバラク・オバマ氏の存在はそれを体現している。オバマ氏もメリトクラシー(=アメリカン・ドリーム)を繰り返し賛美している。
「白熱教室」で知られるハーバード大学の人気哲学教授マイケル・サンデルは、このオバマ氏の発言を市場原理主義的な「出世のレトリック」だときびしく批判する。(レトリック=巧な表現をする技法)
「富は才能と努力のしるしであり、貧困は怠惰のしるしである」とする世界では、エリートは自分の成功を神の恩寵(当然の報酬)と見なし、低学歴の白人労働者階級を「屈辱」に追いやることになってしまう。

無理ゲー社会

また、マイケル・サンデルによる別の本「実力も運のうち 能力主義は正義か?」は、以下の内容。

現在のアメリカは、エリート(民主党支持者)と非エリート(トランプ支持者)に分断されている。

エリート(リベラルな人々)は自分が頑張って高学歴を得るために努力した。そして低学歴の人は努力を怠った怠け者だから負け組という意識を持っており、国籍や肌の色の差別には反対しても学歴差別は公然と行っている。そして彼らはそれを差別とは感じていない。

リベラルエリートに見下されている非エリート達はそれに反感を抱いており、それが彼らを民族主義や国家主義に走らせるのだ。

しかし、君たちが自分一人の力で勝ち得たと思っているその高学歴、高所得というのは実は幸運の産物であるにすぎないのだから、もう少し謙虚になって無意識の差別はやめよう。

(「実力も運のうち 能力主義は正義か?」Amazon書評より)

と、リベラルの一派であるサンデルは自戒を呼びかけている。


日本でも、高学歴であっても、運・社会のタイミングなどで必ずしも高い地位の仕事に就けるとは限らない。氷河期で新卒就職できなかった人たち、女性、年齢差別など、何重にも差別されることもある。
能力があっても、頑張っても自分ではどうしようもないことがある。

何でも「自己責任」と言われてしまうとツラい。

「無理ゲー社会」では、相模原障害者施設殺傷事件のことにも触れていた。
日本の多くの学校で働いたある教師によると、偏差値の高い学校の生徒にこの事件の犯人に肯定的な考えのものが多くいたという。ううむ。。

自分がたまたま障がいを持たずに生まれてきたのは、単に「恵まれて」いただけだということを忘れて欲しくない。たとえどんな子どもでも親にとってはかけがえなく大切なものだ。


著者は、日本も「頑張れない」を許さない残酷な社会であると指摘している。

ケーキを切れない非行少年たち(児童精神科医・宮口幸治)」の続編「どうしても頑張れない人たち~ケーキを切れない非行少年たち2」で「頑張ろうと思っても頑張れない」少年たちのことが書いてある。幼児期の虐待や育児放棄などによるもので本人の意志ではどうしようもない。彼らこそが支援を必要としていると著者は言う。


また著者は日本の女性の生きづらさにも言及している。

日本のジェンダーギャップを象徴するのが、母子家庭の貧困率だ。

結婚は、赤の他人同士が一緒に暮らすので続けられるかどうかはやってみないとわからないところがある。誰でも失敗する可能性がある。にもかかわらず、日本は子どもを産んで会社を辞めた女性にとって「結婚に失敗すると社会の最底辺に突き落とされる社会」だ。

無理ゲー社会

また、「遺伝ガチャで人生は決まるのか」として以下の記述もあった。参考までに。

親(家庭)の影響が大きいのは幼少期までで、小学校高学年になれば友だちとの付き合いの方が大事になり、思春期を過ぎれば親の説教などどうでもよくなる。重要なのは友だち集団の中でのふるまいになる。

無理ゲー社会

幼い子どもの子育てにこだわってもあまり意味がないのかも知れない。ただ、思春期あたりからの友人環境は大切かも(?)知れない。


その他本書には秋葉原事件についての詳しい考察もあった。


「無理ゲー」となってしまった社会を楽々と生き延びる解決策は、ないかも知れない。

先日亡くなったゴルバチョフ氏は、日本は民主主義国なのに社会主義に近い政策であると注目していたとのこと。なるほどそうかも。
ゴルビー、優しさと知性が感じられて好きだったなぁ。

日本では、学歴差別どころか身分差別がまかり通り、非正規社員が働く日本人全体の6割を超えても政府はほったらかしである。おかげで非正規の安い賃金に引っ張られ(全国勤労統計調査で国民の年収の平均値を出して、それを参考に公務員や派遣会社などが賃金を決めている)、いつまでたっても全体の収入は上がらず。正規・非正規の賃金差は、アメリカの大卒・非大卒の差より大きいかも知れない。日本は大昔からILO(国際労働機関)に指摘され続けていても、カースト制度を廃止しない国なのだ。身分差別、性差別は人権侵害なのだ。
それと共に絶望した人たちも増えているのかも知れない。
日本の絶望した若者が、自暴自棄になり電車内で火をつけるなどの事件もたびたび起きる。

また、働いている人は日本人全体の4割に過ぎないという。
例えば自分らしく働こうと思っても、ほどほどに働けない。時短のパートやアルバイトでも激務を強いられたりする現実がある。激務の奴隷労働に耐えるか辞めるか、ではない選択肢があればと思う。

アメリカの現状は日本の未来、とならないことを祈る。


ただ今年に入って、国の指示もあり大企業はベアを上げてきている。また大企業やITなどは海外に優秀な人材が流れるのを防ぐため、破格の賃金を提示する例も出てきている。まだ大企業だけだけれど。
コロナ後で人手不足で時給も上がってきているかも知れない。

良い流れで上向きな日本になることを祈る。

息子達が社会人となって、残念ながらこんな日本になっているとは思っていなかった。私達も自分達なりに頑張って働いたのだが。。

資本主義・自由競争、民主主義が行きつく先は一体どこだろう。

というわけで資本主義が行き詰まり、2021年のダボス会議では「グレート・リセット」が議題に上がった。
同じ人間同士が、分断し戦争などをするむなしさはわかっているはずなのに、何故分け合えないのか。環境問題、格差問題、貧困問題など叡智で解決しよう。

ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスが超大金持ちなのは構わないが、日本は誰もが普通に働いて食べていける社会を目指す方がいい。
オーストラリアでは、正社員で共働きで子供がいる場合、週3、4日の労働を夫婦どちらも選べるようになっている。確かに、週5日のフルタイム労働はキツい。
日本も早よ!

そうすれば生まれる子どもも増えるかも。

goma2
お盆に預かったCAT。冒険心旺盛。脱走事件が発生。外を満喫し無事戻る。